ミューズへの恋文/ただのみきや
 
ビーパウダー
求愛と死の舞踏 惜しむことのない 
狂気と孤高のファルセット
朝明けと見紛うライトに焼かれながら
擦り切れた翅を激しく 尚も激しく
すると幾つもの幻の女たちが
像を重ねながら赤い河を渡った
ビル群が墓石に見える一瞬の静寂に
かき消される酒場の夢のように


燃え尽きた
かのように見えた
聴衆の乾いた意識の暗渠に
時の波間に飲まれて消えたのだと
だが幻は硬質だった
体積を持ち触れるほどに
一粒の種の中から林檎をもいで差し出すかのように
あなたは匂い続けた
幾つもの枷が食い込み血を流しながら
湧き立つ意を音に縫い合わせ続けた
それは絶えざる空虚へ
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