日々/飯沼ふるい
過去がさきへ進まんとする足を掴んで離さなかった」って
数十行に圧縮された時間の密度に恐ろしさを感じる
いまやもう
頬の強張りなんて忘れてしまい
こんなにも優しい朝のために
涙があるのだ、なんて
太鼓の余韻に浸る夏の暮れに想った
いつかぼくの浪漫の話で
なまあたたかい日射しにまみれて
煙草をふかふかふかふかしている
いまのぼくにとっては
閉じきることのできなかった瞼ゆえに
眼球にぢかに凍みいってきた
冷気ゆえの涙にすぎなかったのだろう
浪漫もなにもありはしない
このように
好いた人のうなじや胸の
やわらかい筋肉や脂肪も
いつか
ぼくの言葉に混じった
ヤニ臭いた
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