足跡に名札がついたことはない/ホロウ・シカエルボク
調律するためのものだった、そして、おれが踏みしめてきたものをどのように理解しているか、口にしてきたものをどのように消化し、排泄してきたのかという確認のようなものだった。そうして自分自身のための長い長い名刺を作ることで、おれは自分の人生を出来うる限り分解して組み直したのだ。別にそれで過去が塗り替えられるわけではなかったし、記憶や認識になんらかの影響があるわけではなかった。だがいいか、パーソナルコンピューターだってコマンドがない状態でも動作し続けている、パーソナルコンピューターという物質として生き続けるために。おれも、おれという人間として生き続けるためにそうしてハードディスクを回転させ続けているのだ、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)