夏の亡霊/ホロウ・シカエルボク
はっきりと喪失が意識された動作だった、ただただあてのない放出があっただけの…踊るように歩いていた二人組の女子高生が素っ頓狂な声を上げて、そのあたりを歩いている何人かの連中が振り返る、その誰もが似たような寝ぼけ眼で―きっとどいつもこいつもこのあたりで働いている人間なんだろう、きみのモカシンが不意に進路を変えてその女子高生を捕らえる、すれ違いざまに巧妙に肘を背中に入れていく、いって、と女子高生は苦々しい顔をして振り返るが、誰がそんなことをしていったのか想像もつかない、おれは女子高生の、化粧だかウェザリングだか判らない顔をそれとなく眺めながら、我関せずといった態度で通り過ぎていく、背後で舌打ちが聞こえる
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