夏の亡霊/ホロウ・シカエルボク
紙パックの飲料水が路上で踏み潰されて幾何学的なかたちにねじけ刺さったままのストローから血を流す、きみのモカシンはそれを石かなにかのように避けて歩いて行く、あとに続くおれは植え込みに残る昨日の雨のにおいを嗅ぎながらそいつを、だれも踏みつけることがない場所まで押しやる、スリップオンの外側で…アーケードの周辺で人々が激しくうごめき始めて、昨夜から寝ていないタクシー・ドライバーが何度もクラクションを鳴らす、野良猫が二匹、じゃれながらそのそばを走り抜けていく、アナログ・カメラがフィルムを巻き上げるような音を立てながら制服を着た自転車の学生たちが魚のように自由な軌道を描く、自由か、おれは彼らの背中を追
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