一人の女優に捧げる詩/ただのみきや
 
気持ちに慣れることが必要だった


自分とはなにか わからずに
自分なんかないと決め込んで
あなたは毎日 演じ続けた
子供を 大人を 男も女も
遠い国の女王
美しい歌姫
それがあなたの遊び
それが救い
赤く燃える空を
鴉の群れのように幾つもの仮面が飛んでいった
禍々しくはなかった
赤い涙が流れてもまだ見つめていた
あなたにしか見えないものを
夢と憧れはその血にまで溶け込みあなたを形作った


あなたは女優になった


演じる時にはあなたは演じ
役に成り切る まさに憑依!
演技が終われば いつものあなた
風変りと評された
ごく普通に振舞っていてさえ
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