夢を見なよ、この夜はまだ明けることはない/ホロウ・シカエルボク
のない道を歩くことが心地よく感じられるようになったのは
ちゃんと思い出すと余計な記憶を時間の墓場から引きずり出しそうな気がして
それ以上そのことについて考えるのは止めにした
古い石敷きの路面はもとがどれくらいのサイズだったのかも判らないほどに砕けて
スニーカーのソールの下で大仰な装飾品のような音を立てた
暗闇に装飾品、そんな意味のないフレーズを頭の中で呟いて
この路地を出たらどこへ向かおうかと思案していると
先の暗がりから友達が歩いてきた
数年前に喧嘩別れしたままになっていたやつだった
「久しぶりだね」とそいつが言った、昔のことなどもう忘れたという調子で
「そうだね」と俺も言っ
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