夢を見なよ、この夜はまだ明けることはない/ホロウ・シカエルボク
 
害者が誰かなんてまるで判らなかったし
数人に電話をかければアリバイなんて簡単に証明出来たから
脈のないお見合いみたいに話はたいして盛り上がらなかった
「失礼しました」と警官は帽子を脱いで頭を下げた
そうすると彼は凄く若いみたいに見えた
べつに急いでいないし、と笑いながら俺は彼を労った
大変ですね、なんて白々しいことは言わなかったけれど
今日日の街中で警官が大変な思いをしていなかったらこの辺りは死体だらけだ
軽い会釈をして警官と別れたあと
表通りが嫌になって適当なところで路地に入り込んだ
街灯など数えるほどもないその路地を通るのは四年ぶりくらいだった
いつからだろう、明かりのな
[次のページ]
戻る   Point(1)