【批評ギルド】 『I氏の走り書き』坂田犬一/大村 浩一
なら誉められる展開ではない。最後のコーヒー云々ともども「訳が
分からない」で処理される処かも知れない。
だが、本当に分からないだろうか? ある意味で直接極まるこの表現を、
可能な限り皮膚に再現してみるといい。
文字通り膚接するリング(意味ありげな環のイメージが、この詩全体の彫
りを微か深くもする)の硬さ冷たさの拘束感に逆に慰められ、そのくせ眠る
時には煩わされるのを嫌う、ひたすら自分中心の話。不安の実体は分かりも
しないし、かと言って自分の衝動に身を委ねる程の勇気もない。それほどま
でに、この詩の話者の心理は内向している。
私が気になるのは、これほど他者をスポイルして
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