【批評ギルド】 『I氏の走り書き』坂田犬一/大村 浩一
いたら反則だろと言いたくなる。読者にすれば引かせられる表現だ。
それほどにこの詩には、構えや修辞という意識が希薄だと思える。
だがこの不注意さが、この詩にあっては逆説的に、作者の感受性への信頼
感へと、かすかに繋がっていく。
#指輪の数を四つに増やした。
#束縛するものが欲しいのかもしれないと思っている。
#そのくせ、寝るときには全てを外してしまう。
#指輪も腕輪も。
#どんな精神の表出なのかは分からないが。
#身を委ねることは当分出来そうに無い。
#仕方が無い。
(同 第5連)
自分が気に入ったのは、この第五連だ。何の前置きも無しに指輪の話。普
通の文章なら
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