月の町 お題、即興ゴルゴンダ(仮)より/田中修子
 
声はこだまして大きくなり、笑い声にふくまれる唾液が香をましてひかる虫をあつめ、空の雲をはらって月はよりいっそう光った。

あらゆる町角に男たちの姿が鏡にみすぼらしくうつしだされた。月の町に入ったばかりのときは、彼女たちの幻想に化粧されて王子のように美しくなっていた姿が、昔より老いてより醜い姿になったのをみて、わけのわからぬ恥に震えて彼女たちに手をあげた。

《ぼくのイメージがこわれた》《メンヘラたちめ》《こんなにもしてやったのにどうしてくれる》
《化けの皮をはがしてやった!!》

彼女たちは悲鳴のような歓声をあげる。

《もうこんな町はうんざりだ、もといたところに帰ってやる》

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