月の町 お題、即興ゴルゴンダ(仮)より/田中修子
 

《どうぞ、どうぞ》

遠くの町の監視塔から月の町をこっそりとのぞいていた監視人が、驚いて声をあげてただちに月の町の門扉へと取締官を派遣した。

《きたならしい男がすごい形相で手をあげていて、月の町の少女たちがおびえているようです》

じっさいは彼女たちがみてきたものはもっとおそろしいもので、男たちが変貌することやそれにすこし恐怖することなど彼女たちのうちには娯楽のひとつだった。ひとりではない、硝子窓を流れるとうとうの洪水の彼女たちが、友を失うことのほかになにを恐れることがあろう。男たちは取締官が到着するちょうどよいころに、月の町から少女たちに放り出され、捕縛されてうめき声をあげた。

月の町のそんな色恋沙汰を食って、空にうかぶ大きく冷たい石ころの私は、今日も白く肥えて大きく光ることができる。私に照らされた、ほんとうに無邪気な少女と腫れあがった男こそ、月の町のあたらしい住人にふさわしい。

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即興ゴルゴンダ(仮)さまを覗いてでていたお題「月の町」をみていたらむくむく妄想が浮かんだんですが、とっくに締め切りを過ぎていたのでした。
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