雪原の記憶/山人
を止めるきっかけになった事件があった。二〇〇六年の事である。
熊狩りの時期になったら、今年こそ参加しようと思っていた。
熊狩りは、冬眠明けの熊に限って害獣駆除という名目で、数等の捕獲が許されていた。
熊狩りを行う人は勤め人が多く、平日に熊狩りに出られる人は少ない。複数人でなければ熊の捕獲は出来ない。
熊は他の獣と較べると著しく警戒心が強く、嗅覚・聴覚が敏感だ。また、強靭な骨格や硬い脂肪の皮脂があり、岩場から転がり落ちても怪我を負う事はない。まさにゴム鞠のような体なのだ。しかしながら、薮の中を猛進することができるよう、目は小さく、視力は良くない。
当地では熊のことを「シシ」と言った。
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