言葉の個人史/葉leaf
じるものではない。言葉は日常生活でも盛んに用いられ、詩人の日常での言語使用の文脈もまた言葉の個人史に影響を与える。日常生活を規定しているのはその人の生きる共同体や時代であるから、言葉の個人史には社会や時代の影響が刻まれる。例えば電車で通勤する詩人の作品の中では「駅」という言葉がその詩人独自の意味合いを生活から受け取るであろう。
また、この個人史の問題は単語レベルで終わるものではなく、思想やテーマの問題にもかかわる。詩人がかつて一定のテーマのもとで思考し感受した内容は、当然後続の詩群へと引き継がれていく。思想やテーマについても詩人は個人史を持つのである。
ところでこの言葉の個人史はきわめてプ
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