どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
なかで妙に静かな目をした彼女の前を、陽平は通り過ぎた。その二人の痛みは、それ以上交わることは二度となかった。
再び河原である。少女は死んでいる、というようなことをさっき記したが、それは厳密にいうと真実ではなかった。それは、肉体的に死亡している、身体機能が停止していると言う意味での死でしかなかった。少女の魂―意識というべきだろうか、それはまだ生きていた。そしてどういうわけか、その肉体から出ることが出来ないままで居た。死ぬまでの少女は朦朧としていたが、死んでからのちの彼女の意識はしっかりとしていた。利口な娘らしく、自分の現状を目にしても戸惑うことがなかった。彼女は肉体的に死亡してからずっと
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