どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 
七というところだろうか、そんな年頃の人間が浮かべるような表情ではなかった。もっとも、そんなものの見方は現在ではもう古いのかもしれない。いまもっとも人々を平等に扱っているのは、絶望や徒労感というようなものに違いないだろう。少年には名前を与える、彼は陽平という名だった。ファンシーショップの店の前に居る、売り物のイラストから抜け出してきたような奇妙なコーディネイトをした若い女の店員には、陽平が激しい痛みを抱えて歩いていることが判った。だがそれを理解したところで、彼女に何が出来るわけでもなかった。彼女自身、その痛みのなかで喘ぎながら、自分を覆い隠すような容貌をこしらえてそこに立っているのだった。笑顔のなか
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