どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
ってはいないだろうことは、この状況から考えれば明らかだった。パーカーのついた淡い水色のスウェットの上下を身に着けていて、つま先と踵だけを隠す靴下を履いていた。自分の部屋で寛いでいるみたいな恰好だった。季節は二月で、そんな恰好でこんな場所に居るのは絶対に寒くてたまらないはずだった。でもそれは、生きていればの話で、いまの彼女にはそんなことは関係のないことだった。いまは明け方で、昨夜遅く独り言のように降った雨が残した水滴が屋根の至る所から落ちてくる音だけが静かに響いていた。建物の周りには河原特有の真っ直ぐな背の高い草が生えて、対岸を走るこの辺りの唯一の道路からは決してこの建物を見つけることは出来なかった
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