へび坂/田中修子
が続き、この子はいつまで生きられるのかと、心配されていたらしい。
ぬるくなったお絞りがおデコからはずされ起き上がる。熱く腫れたような体を、しぼりたてのタオル、次にふんわり乾燥したタオルで拭いてもらうと、あたたかくなった体で祖母に抱きつきたくなるきもちを抑えた。
気がつくと祖母に手をひかれてへび坂をくだっていた。
「今日はあったかいなぁ、出られてよかったなぁ」
体中が湿気につつまれるようで、春隣のころだったのだろう。
あの頃は風さえ見えるようだった。風には花や雨や空があった。
その風になでられてみどりが、ざわざわとゆれている。私の湿ったい手が、祖母の乾燥した手にしっかりとひかれる。ふ
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