見なれた顔 ★/atsuchan69
 
古畳、いや茅屋じゅうを揺らしていた
猫は右の前足で額のあたりを何度も拭きながら、
ふと部屋の隅に寄り添って無心に眠る顔のない女と姿の消えかけている子供らを見た
とたん、鼾が止まり落武者ヘアーの見慣れた顔が何かを話した‥‥なかずんば、すせろう、
意味不明な寝言をつぶやくと大きく見慣れた顔が右に傾いてごろりと転がった
そもそも動く物に猫は敏捷に反応する、猫パンチ! 転がる見慣れた顔へ猫パンチ! 
弾みをうけて見慣れた顔はどんどん転がってゆき、追う猫はさらに猫パンチを繰りだす
転がりながらも、すせろう、ともやもなるなればあさかなくべねやのうと寝言をつぶやく
‥‥すせろう、
そう言って、
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