見なれた顔 ★/atsuchan69
 
て、無精髭の見慣れた顔は大粒の涙をながして眼をひらいた
すせろうともまけじみれたまかしきおんなきうごめよなあ、すみまかしものよのう‥‥
眼のまえの猫を睨んで、ついに見慣れた顔は動きを停めた。口はしっかりへの字に結んでいる
よほどその形相が怖ろしかったのか、ふぎゃあ! 猫はたちまち逃げだした


正月、
あいかわらずの茅屋で畳も腐敗し変形菌類の発生が見られるほどであったが、
それでも顔のない女と姿の消えかけている子供らは晴れの日の着物を着ている
卓袱台の上には、ブルターニュ産の海泥で捏ねた見事な餅が置かれていた
さらに普段はとても口に出来ない金や銀の色紙や千代紙までが漆器に盛り付けられていた
見慣れた顔は髭を剃り、立派な兜をかぶって床の間に堂々と飾られている




戻る   Point(5)