いにしえの夜の復権‐‐蜂飼耳『顔をあらう水』/kikikirin75
 
るように、文字と火は文明の象徴でもある。

振り返るときの/仕方をまちがえ/顔という顔は汚れている 【24頁「ゆえに、そこにそらの」】

このような冒頭から始まる「ゆえに、そこにそらの」は日本語に限らず、文字、ひいては言語の決定的な瑕疵を深く自覚している詩だ。

口からの言葉は人に遅れて、というのは/むかしのことではない、いまのこと/文字のかなしみ/(取り扱い注意)/文字という容れ物の/吊り橋のきしみ/人のいない世界はどんなだろう 【25、26頁「ゆえに、そこにそらの」】

文字は、というよりそもそも言葉は、現実そのものに対して決定的な遅延が生じる。同時に、言葉はものそのものではな
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