いにしえの夜の復権‐‐蜂飼耳『顔をあらう水』/kikikirin75
はない。そこには絶望的なまでに差がある。しかしわれわれは、そんな言葉の世界の中で生きてしまっている。われわれは果たして、言葉に塗れていない、火で煤けていない、清潔な顔、に達することができるだろうか。
というより/痕跡を残して非参加に/(それで、あるいは、それでも)/日と月のめぐりに不具合はなく/人のいない世界、どんなだろう/地と水を分け合って、仮の居場所を借りて仮寝の/「はい」「いいえ」/まっしろな、鳥のまばたきと羽ばたきに/色を変えつつ海の呼吸が映るなら/参加あるいは非参加の/もたらす航路がそこにあり/見えない「はい」と「いいえ」を運ぶ/口からの言葉はいつも、いまも/人に遅れて/間に合う前
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