春と詩はよく似た病と嘯いて/ただのみきや
 

            指先からカップへ


飛び散ったかなしみは落とせないだろうたぶんずっと
(どうしていつもおまえはそうなんだ! )
いつも通り怒っている誰かが一斗缶をひっくり返す
わたしも染みだ誰かの心の落せない汚れの変色


真夜中の湖を漂い包む
水蒸気は死せる花嫁のベール
舟を出して水底を探る とても長い 十字架で
女の髪のような水草の奥深く 深く底へうずめ
届かないものへ 届くように 
爪先ひとつ水面に跳ね 遠く
音は頬に霧とかかり
月でもない月の豊満さ 呼吸を忘れ 
窒息する子供たち


コーヒーを飲み残して出かける
風の生まれる場所があ
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