曲り下る路のむこう/ただのみきや
 
クで印を付けられた気分になる
地蔵の後ろは刈り入れの済んだ畑――おそらく麦か何か
いつのまにか川と路とのあいだに広がっていた
数羽の鴉が土手のあたりの曇り始めた空を行ったり来たり
耳の遠い老人たちのように大声で言い合っている

さらに走り続けると左手の少し奥まった場所に小さな祠があった
ずいぶん傷んでいてはっきり判らないがたぶん稲荷だろう
屋根の一部に銅が使われていて緑青で染まっている
いったい誰が管理し誰が拝むのだろう辺りに人は住んでいないのだ

畑と雑木林に挟まれた路をしばらく真っすぐ走り抜け
日もだいぶ暮れかけた頃 ふと左手の雑木林が後ろへ退くように開け
砕石を敷い
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