セパレータ/紅月
かすかにのぞく稜線
小刻みにうごめいている黒点たち
どれもが形式ばったあやうさを湛え
映るすべてがモノクロに見えた
色を告げるための比喩はとうに擦りきれ
会釈だけが車内にからからと反響しては
こみあげる嘔気に
からっぽの中身を吐き散らかした
ここではないどこか
どこかではないどこか
散らばった臓物が造花のように咲いては
一人分の隙間に丸まった私たちは
どこまでも水平に運ばれていく
緋色の空を切り分ける高架
血液の流れはたがいに平行をたもち
都市はいきものの真似事をつづける
あざやかな喧騒から次々と水は溢れ
やがていびつな流れとなって
指し示すばかりの都市
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