本当じゃない限り出来事のすべては簡単なことなんだ/ホロウ・シカエルボク
 
…女は何度も潤んだ瞳で笑いかけ、拳銃をこめかみに当て、引金をひき、うなだれて動かなくなる、薄い銅線みたいな色の髪が赤すぎる赤に染まってゆく…朝から何度繰り返されたことだろう?ある意味で彼女は、永遠に生き続けることに成功したのだ…なんて、童貞の坊やが大真面目に言いそうなフレーズすら俺は思い浮かべる、俺はおかしくてしょうがないのにクスリともしないで忙しく生きては死に、死んでは生きる女を眺め続けている、正午を少し過ぎたところで、食卓には何かを食べた皿が残っている…ケチャップをなぞったあとがあるから、たぶんそうなんだ―俺は女の髪が汚れていくのを惜しいと思う、ホントだぜ?朝から何度もそう思ったんだ、俺、そう
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