本当じゃない限り出来事のすべては簡単なことなんだ/ホロウ・シカエルボク
そういう色の髪、大好きなんだぜ、だってあまり、人間を感じさせないじゃないか…
夕刻になると動画を止めてパソコンを閉じ、肉切場のようなバスルームでシャワーを浴びる、浴びながら、脳天の風穴に38℃のシャワーが雪崩れ込んで、俺の脳味噌を欠片も残さず排水口へと流してくれればいいのにと考える、俺の頭は抜殻になって、誰かがいつか見つけてくれるまでここでシャワーを浴びてふやけていくのさ―排水口に流れ込んだ俺の脳味噌は、この世で最も薄汚れた世界の中で覚醒する、そうして、下水溝に響き渡る大声でこう叫ぶのさ―
「簡単なことだったぜ!頭なんかさっさと抜け出しちまえば良かったんだ?」
俺はシャワーの湯を止める、湯気を上げる身体をバスタオルで包み、窓の外を静かに塗り潰そうとしている夜のことを考え始めている―
俺の脳天に風穴がふたつあいている、ひとつは自分でどうにか出来る、もうひとつは自分じゃどうにもならない、その穴はお前にどうにかして欲しい、なあ俺、本気でそう思ってるんだぜ……
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