phosphorescence/紅月
と歩きつづける。
それからしばらく歩いたのだけれど、いっこうに人里は見えてこないし、もはやどれくらい歩いたのかすらわからなくなってきて、もしかしたら歩いているのではなく止まっているのかもしれない。しだいに体が金属のように重くなってきて、仕方がないから、ふらつくたびに身につけていたものをひとつずつ捨てていった。廃棄をくりかえし、風とおなじくらいのかるさになったころ、ふたたび人のかたちをした幽霊とすれ違う。軽く会釈を交わしてから自宅への道を尋ねてくる彼に、僕は歩いてきた方角を指差す。これから撮影されるたくさんの写真。そして僕は映らない。映ってはいけない。それが決まりごとなんだ。
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