phosphorescence/紅月
[bunch]
暗室のなかで現像液を吸いあげる花々は撹拌と停止の指揮にあわせて示されたかたちを繕ってみせる。点を隠すなら点のなかなんだよ、と花が言って、言ったそばから花は他の花に覆われすぐに見えなくなる。群生する花々はたがいの弾力をおびやかしながら触角を絡めあう。点描の線がするすると延びていく。線はしだいに屈曲し円をかたちどるだろう。地面に散乱する不揃いな極彩色の果実。どこからともなくあらわれた鳥が、むすばれたばかりの果実のやわらかさへと嘴を埋める。いつしか暗室のなかをたくさんの鳥が飛び交い、机に無造作に積まれた写真の束が彼らの羽撃きに巻きあげられてぱらぱらと宙を舞っていた。果実へ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)