phosphorescence/紅月
 
途端におさまり、すぐに未明はもとのしじまを取り戻した。何事もなかったかのように寝巻を着てそのまま眠りについた彼女はやはり夜のことをなにひとつ覚えてはいないだろう。朝のニュースはどの局も歴史的干魃による水不足の話題で持ちきりだった。

その日から毎晩、彼女はこの街に雨を降らせつづけた。そして、彼女に呼応するように世界は乾きつづけた。





[around]

飲み会が終わったあとの自宅への帰りのバスのなかでうっかり寝過ごしてしまって、目を覚ますとさっぱり見覚えのない薄暗い山道を走っていた。とりあえず聞いたこともないような名前の停留所で降り、iPhoneで地図を確認するのだけれ
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