淡水系/ただのみきや
まわれば目もまわる
やがてふわりと着物は舞って
時の波間に漂い消えていった
女のからだはバラバラと崩れ
肉塊や臓器は地面にこぼれ落ち 途端に
すべてが水になって流れた
残されたのは一匹の鯉
黒々とした鰓で喘ぎ
ぱくぱくと言い尽くせない想いは泡となる
みやびやかな言葉のペルソナが内なるものを覆っていたから
卑下の専門家がやってくる態度だけの友人が
そいつを活造りにしようと笑っている
「――皆で突っつこうじゃないか 肴として」
おれの趣味じゃなかった
生きたまま泳がせたい
尾ひれ背びれ胸びれが揺れる様子を目で追いながら
薄紫に煙る意識と無意識の境目の辺りに浮かべて
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