開拓村/山人
 
 今現在、やはり良はこの世にはいない。それが当たり前すぎて笑えるほどの生き様ですらあった。


昭和四十七年にかつての開拓村はスキー場として生まれ変わった。
いくつかの経営者を経、一時は市営となり、今は再び得体のしれない民間業者が経営している。
寂れた、人影もまばらな山村奥のスキー場に、私は今日も従業員としてリフトの業務に出かける。
第二リフト乗り場付近に目をやると、杖を片手に持った父が、すでに物置と化した古い家屋に向かうところであった。


          
         *


開拓村には鶏のおびただしい糞があった
すべての日々が敗戦の跡のように、打ちひしが
[次のページ]
戻る   Point(5)