美しいひと/日時計/ただのみきや
 

豊かに湧き出している場所だとでも言うように
尽きない微笑み湛えながら
静かに暮らしている
彼女の想い描くあの新天地がその顔に映り
鏡のようにその輝きを反射しているのだろうか
よく見るとその顔には
とても細かい 無数の
まるでガラスの欠片で何度も擦られたような
大小の傷跡が残っていた
過去の出来事は夢にはならない
だけどそれは時間にすっかり拭われた遺跡のように
もう語らなくていい
ただ光に晒されていればいい
すっかり白くなった前髪の幾筋かが
午後の光にふわりと揺れていた


未来を楽観視しているのか
たんなる諦念か
死や来世への憧憬だろうか
逃避と呼べる
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