美しいひと/日時計/ただのみきや
にやら温かさを感じて
ふと後ろを振り向いたのです
射し込む光の方へ
今まで目にしたことはあっても眩しくて
見つめたことはありませんでした
牢獄の暗さと影に慣れたわたしの瞳は
まるで焼けて潰れたかのようで
目を瞑ってもしばらくは明々と燃えていました
するとわたしは初めて 頬に微かに
吹き込んで来る風を感じたのです
そのまま光に顔を向けて目を瞑っていると
こんどは草の匂いか花の匂いか
牢獄にはないとても懐かしい匂いがしてきます
驚きで心がふるえました
きっと今までもそうだったのでしょう
ただ自分の影ばかりを見つめて気が付かなかったのです
わたしは想像してみました
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