美しいひと/日時計/ただのみきや
 
足もつかないほど持ち上げられる
そうかと思えば息が止まるほど抱き寄せられて
泣き顔を覆う両手の指の隙間から
澄んだ涙ではなく
暗い牢獄の汚水が滲み出して
すすり泣きの向こうからは嘲笑う声が
狂ったバイオリンのように


生活の綻びはひどくなり繕うこともできません
やがて すべてはバラバラに
?がりもなく 意味を失って
立ち行かない紙切れのよう足元にまき散らされても
頭をかすめる思いとは裏腹に
拾い上げようとも繋ぎ止めようともしないで
牢獄の冷たい椅子に置き忘れられた人形のようでした


その日もわたしはいつものように
影を見つめていたのですが
うなじになにや
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