美しいひと/日時計/ただのみきや
ところがある日のこと
影を見つめていると 影が 勝手に動き出したのです
影がわたしに従うはずなのに
わたしは影につられて動いてしまう
いつの間にか影が語ることをわたしが語り
影が振舞う通りに振舞っていたのです
抑えようとしても無駄でした
いつも人を憎んだり妬んだり
そんなことはしたくないと
必死にこらえて戦いました
ひと時は 抑えられるのですが
抑えた分だけよけいにドロドロした悪意の妄想や企みが
口や毛穴から噴き出して
そのみじめさと言ったら
影は嫌がるわたしに口移しで罵りや嘲りを含めます
私の半生は影との会話 影とのダンス
くるくる回され翻弄されて
足も
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