小川/ただのみきや
 
で往く
その感覚は
もはや誰のものでもない
意識も
あらゆる連なりの中で
ひとつがすべてに
すべてがひとつに


あの日
大雨が激流に変えた
おまえは今や静謐を取り戻し
ふたたび生と時は縒り合された糸のよう
人ならぬ詩人に紡がれる
おまえの底に
眠れる大きな石
あの濁流の中で姿こそ見えなかったが
ゆらぐことのなかったもの
あらゆる虚無へと誘う力
生から死へと流れ下る
時の石工の腕により
かつて鋭くささくれだった
恐怖から
傷つけてしまう
闇雲にそれを己だと信じていた
不格好な尖りの
全てを
まるで前世のよう
忘却し
華美ではないが優美にも想
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