希望について/カワグチタケシ
 
地の広大な敷地にはサッカー場とテニスコートが8面、スケートボードランプ、芝生の広場とバーベキュー場、防砂林、そして観覧車がある。
 配属されて最初の半年間は複数の持ち場をローテーションして基礎的な動作を身につける。6つ目の担当が観覧車で、結局そのまま10年が経った。
 
 観覧車の運転はきわめてシンプルだ。スタートとストップをひとつのハンドルで操作する。一周15分。難しいことはなにもない。
 午前9時に出勤し、午前9時半、客を乗せる前に2周、ゴンドラを回転させる。最初は無人で、2度目は運転手を乗せて。点検のための空運転はなによりも耳を澄ますことが重要だ。軋みや異音がないか。15分間集中して
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