夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
梅の花が咲くことは、その日から数十年なかった。

 王は餓えに苦しみ、常にものを食べ続ける。
 女王と王女は美貌をすべて失った。
 王子は、弱い体を癒す為によくつかっていたこの湯殿から出れば乾いてもだえ苦しみ、それでも死ぬことはできない。
 その中で私だけは、一見、何も変わらなかった。

 数十年、荒れ狂う天候の中、必死に治世をしき、苦しむ家族をそばに、不休で不死の薬の解毒薬の研究を重ねながら、年老いていった。そうして、しわくちゃの老婆になり、湯殿の中で夫に抱きしめられ、
「幾度生まれ変わろうとも、必ずあなたたちを救う」
と言い残し、春祭りの日に死んだ。その年から、何かしるしのよ
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