夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
うな服を着て、湯船の中に立っている。
「あなたにはお変わりはないようね。お父様とお母様、そうして可愛い妹の変わりようには驚いたけれど……」
「僕はこの湯殿から出られない。出たとたん、乾き果てる苦しみが永遠に続く」
静かに夫が言う。
「覚えていないのかい? 僕たちのうけた罰を」

 そして私はすべてを思い出した。
 すべてだ。これまでの私の、幾度も幾度もの生を。

 遠い、遠い、数百年のはるかむかしだ。
 この王たちは素晴らしい治世をおさめ、国はいままでにないほど豊かになった。特に王子が生まれてからは、十数年近く、実り豊かを約束する晴れ、そして雨の素晴らしい気候が続き、王子の生誕
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