夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
の貢ぎ物が毎月港に届けられ、王家の住まう赤珊瑚の塗られた紅城だけはいつも輝いていた。
 不死の王家による不思議な力は、いまやこの国だけでなく、他国を飲みこもうとしているのではないかと思われた。もっとも、その他国とやらも、知識人が殺されつくし、焚書がされて久しいいま、どんな国であるのか知るものなどいないのだが。

 疲弊したこの国で、私は最後に革命を起こそうとして気が狂い、自分と妻と一族を殺した指導者の子どもだった。
 父の体は赤子の私の前で実がはぜるようになっており、赤い血にまみれたその中で、私がひとり、バラバラになった父の指をしゃぶりながら、生き残っていたそうだ。
 運命の子である私は
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