夢夜、二 「春祭りの日に」/田中修子
 
 私は女刺客として育てられた。

 数百年この国は、贅をつくす不死の王家に支配され、民草は汁を吸われつくしてきた。
 老人も、働きざかりのはずの男女の顔も、暗い影におおわれている。聞こえて来るのは溜息か、狂気の笑い声だけだ。子どもや赤子は病にうばわれ、めったにみかけることがない。
 数百年の間、もちろん何回も王家に反旗をひるがえした人々はいたが、成功したことはない。いずれも、直前に指導者が王家側に寝返るか、あるいは正気を失って部下を虐殺し、みずからも死んだ、と言われている。

 そんな、滅びへの道しか見えない国でも、他国からの侵略を受けぬどころか、若い奴隷や食糧、香辛料、宝飾品などの貢
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