道端挽歌/北井戸 あや子
誰が殺したのか
這っている蟻の列を追うと、そこにはコンビニの袋とケーキが潰れていて
突然に吹いた、乳化するような強い風にくたびれたコートの前を寄せながら
立ちのぼる甘ったるい香りへ、ふと、春に燕を見なくなったことを思い返す
滞りもなく二月はもう近くにあり
それはつまり
わたしがもうじきにあなたの齢を追い抜いてしまうことである
その事柄に饒舌なやかましい意味など
ひとかけらとして
わたしは持たせるつもりはない
今、蟻が運んでいるケーキの欠片よりもだ
当然のことだが
あなたは咎めていい
あなたの為に準備される
すべての事象を
あらかじめ手配された悲しみを
よも
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