罅/本田憲嵩
も三番目ぐらいのうつくしさ(らしくて)
橋をわたれば
かつて半年間だけ働いていた
あのホテルがリニューアルした装いで見えてくる
さらに歩いて駅が見えてくると
いつも駅とオレは混交する
(古ぼけた駅は オレそのものだ
目の前にひろがる大通りの店さきどもは
生ぐさい潮風で錆びついたシャッターを常に降ろしてしまっている
この街の炭鉱からかつて採れた石炭は
もはやとっくの昔に時代おくれのものとなり
それさえももはや底を尽きてしまった
オレは半ばゴーストタウンとなった街の駅そのものだ
そしてそれ以下の存在だ
なぜならばオレの許なんかには
もはやだれ一人として訪れもしなけ
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