はさみ/水菜
張っていた身体の力を少し抜いた。
祥太郎の困ったような泣きそうな少し怒ったように揺れる焦げ茶色の瞳を見つめる。
そんな瑠璃子の様子を見て、少し息を吐くと、祥太郎は、視線を落として、目線をずらした。
「……大丈夫だったか」
瑠璃子は、ごめんなさい、と小さな声で謝ると、頷いた。
「……怪我したのは……祥太郎で、私は、」
言葉が出ないまま、胸の奥がつきんと痛んで、知らない間に噛み締めていたらしい下唇が破れたらしく、鉄の味がした。
言葉をいくら選んでも選んでも、音にならずに消えていくような気がして、瑠璃子は俯いた。
「……やるなって言っても、お前は、またやるんだろうな」
押し殺したような
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