千年の海/田中修子
葉づえとして便利につかっていた。
私の精神は不具。
外見はまともに見え、そこそこ可愛らしく見えるように毛づくろいをし、支えてあげなければと思わせるように顔面を幼く塗りたくり、あなたがいなければ生きていけないのです、それだけあなたを愛しているの、一生離さないで、と囁きながら、私は、ほんとうに彼を愛しきっていたでしょうか?
いえ、私が私以外の誰かを愛したことが、結局あったでしょうか。
人としてごまかしていきていくのも、これで最後にしなければならない。外の世界では不具者で、彼に迷惑をかけるだけの存在かもしれない。けれども砂漠の世界では私は、空や砂やゴツゴツした岩や、夜に浮かぶ金の銀の藍の
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