千年の海/田中修子
 
たのに、それで良かったのにと。
 またなんとも言えない怒りがこみ上げて、それを言葉にできなくて、震えました。彼は指輪だけ持って、そろそろと近づいてきました。あと十歩、九歩、-五歩、四歩、三歩-どうすればいいのか分からないんです。
 私はもう放っておいてほしいんです。いくら愛されても、疑うことしか出来ぬ私は、彼が私を愛そうとするだけで、痛くて、仕方がない。
 
 突然強い風が大量の砂と共に吹き付けてきました。
 あっという間に視界が黄色に染まりました。思わず座り込んでしまうほどの強風でした。それでも私は砂漠のヌシなので、足に少し力を込めて立ち上がりました。今はもう、やすやすと人が飛ばされて
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