千年の海/田中修子
 
れてしまいそうな風でした。ターバンがとれ、髪が風に舞い踊ります。ああ、私が嵐ね。髪が切れるような鋭さで顔にあたりました。彼の叫び声を聞いたような気がします。
 風は去りました。遠ざかると、風は風なんてものではなく、天に届くような竜巻であることが分かりました。黄色い砂をひゅんひゅんとかき回しながら、砂丘を崩し、砂漠を切り裂いていくのでした。
 ドアも、彼も、なくなっていました。

 大きな砂丘の向こうに竜巻が消え、静寂が戻ってから、私は不意に後悔しました。外界に戻るためのドアが失われたのはほんとうにどうってことはないのです、けれど彼は……、この一見狂った世界で私をまっすぐに見つめてくれ、あの
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