千年の海/田中修子
でした。それからの年月は飛ぶように去ってゆきました。
今はもうはっきり見えています。小さな指輪です。それと、そのとなりに転がっている、されこうべの姿がです。
あと十歩、九歩、-五歩、四歩、三歩、二歩、一歩。
私は砂丘のてっぺんで、高々とされこうべを上げました。そしてぎゅっと抱きしめました。足の力がぬけて、ぺたんとすわりこみました。されこうべにしばらく頬擦りしてから、そっと指輪を持ち上げました。左手の薬指に嵌めます。太陽の光を浴びて、私の目にとてもまぶしいものでした。
足の上においたされこうべが、カタカタと鳴りました。
「千年、待った、よ」
少しかすれてはいたけ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)