千年の海/
田中修子
たけれど、彼の声でした。
私はされこうべを抱きしめて、泣きました。
考えてみれば、千年ぶりの涙でした。いや、砂漠が出来るずっと前から、私は泣いたことがなかったのです。
されこうべのぽっかりと開いた目や鼻や口からも、どっと透明な水が溢れ出します。ドーンという音にあたりを見回してみれば、四方から水が迫ってきます。彼を抱きしめているので、怖くありません。
もうすぐここは、暗くて清浄な、海の底になります。
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