千年の海/田中修子
 
たけれど、彼の声でした。
 私はされこうべを抱きしめて、泣きました。
 考えてみれば、千年ぶりの涙でした。いや、砂漠が出来るずっと前から、私は泣いたことがなかったのです。
 されこうべのぽっかりと開いた目や鼻や口からも、どっと透明な水が溢れ出します。ドーンという音にあたりを見回してみれば、四方から水が迫ってきます。彼を抱きしめているので、怖くありません。
 もうすぐここは、暗くて清浄な、海の底になります。
戻る   Point(4)